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ゼロエネ住宅と蓄熱

蓄熱技術への期待

さて、現在の蓄熱技術の動向はどうであろうか。化学工学の最新号(80巻10号:化学工学年鑑2016)の10章資源・エネルギーには、蓄熱・ヒートポンプの国内外の動きと研究・技術動向がまとめられている【参考文献3】。蓄熱法の基本的なアイディアは以前とあまり変わっていないが、欧州では地中蓄熱や関連技術である地中熱ヒートポンプの研究開発が相変わらず盛んなようであり、氷蓄熱システムの応用研究や潜熱蓄熱材料のマイクロカプセル化や合金系潜熱蓄熱材料の研究が行われているようである。

そのような状況の中で、太陽日射の強いスペインや米国の所謂サンベルト地帯では、太陽光を集光・集熱して高温で蒸気タービンを回して高効率に発電する太陽熱発電システムの開発が進んでいる。ここでは溶融塩を用いた蓄熱・集熱が重要な技術となっており、最近新しい組成の溶融塩が開発されたことをすでに紹介した【参考文献4】。

では、ゼロエネ住宅で蓄熱はどのような役割を果たすことができるのであろうか。変動する太陽熱を利用する上で蓄熱が欠かせないことはもちろんであるが、潜熱蓄熱材料を用いることにより建物の熱容量を増し、空調負荷を減らす試みが多く見られるようになった(図3参照)。

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図3 潜熱蓄熱材料の利用によって室温を快適な温度範囲に保ちやすくなる

 

冒頭で、蓄熱操作自体はエネルギー損失があると述べたが、蓄熱を行うことによりシステム全体としては省エネになることがあり得るのである。建材の一部として使用することになるため長寿命でなくてはならないし、規格を作ることやどの程度の省エネになるのかをしっかり評価することも必要だ。そのような検討も行われており、普及のための体制が整いつつあるように感じる【参考文献5】。

政府は2020年 にも新築戸建て住宅の過半数をゼロエネ住宅にする方針を打ち出している。潜熱蓄熱がゼロエネ住宅実現に大きく貢献してほしいと願っている。

参考文献

  1. 平成27年度エネルギー白書(資源エネルギー庁, 2016.5)
  2. 神本,「蓄熱技術」, 化学工学、62 (12), 714 (1998).
  3. 窪田,「2 蓄熱・ヒートポンプ」, 化学工学
  4. 神本, 地中熱と太陽熱に関わる2つの話題, 環境国際総合機構ホームページ(2014). http://ecolink21.net/20141201-2/
  5. 例えば, NEDO 太陽熱エネルギー活用型住宅の技術開発http://www.nedo.go.jp/content/100552005.pdf, 草間, 「潜熱蓄熱建材を適用したパッシブソーラー住宅における性能評価手法の提案」, 日本建築学会 北海道支部研究報告集87, p.263 (2014)等.