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政策提言の大きな枠組みと実現手法

政策提言の大きな枠組みと実現手法

環境政策研究所所長 田邉敏憲

政策提言の大きな枠組みと実現手法

(大きな枠組み)

  1. ドイツの成長戦略(域内共通経済市場創設<EU>+ユーロ導入<為替リスク除去>⇒中小企業を含め輸出競争力増大)に倣い、日本の成長戦略も、多国間FTA推進などで、アジア内需を”域内共通経済市場化”することが、極めて重要。
  2. その場合、日本のFTA推進を大きく阻害している農業の生産性を飛躍的に引き上げる政策を講じることができれば、アジア共通通貨ができない以上為替リスクは残るとしても、“域内共通経済市場化”の要件は整備される。
  3. 日本の農林水産業の生産性は、すぐれた工業力を活かし(農工連携)、別添のような、(1)未利用植物資源栽培の耕作放棄地等への展開による、高機能性食品や石油由来の工業用マテリアルの代替商品化、(2)従来2~3割(カロリーベース)しか活用してこなかった農水産物の100%(同)有価物化などシステム化政策で農水産業の所得3倍増、(3)ナノカーボン産業創造等、が可能。トータル採算確保を狙う地域産業システム化には、地域金融機関の役割大。
  4. アジア域内共通経済市場の実現で、日本の優れた中小企業製造業も、ドイツ中小企業(中東南欧市場)と同様に、域内での強い競争力発揮が期待可能。

(実現手法とプレーヤー選定、必要な政策手段)

  1. 別添のような『ビジョン』、すなわち「コーリャン・バレー構想」「農水産業所得3倍増論」「ナノカーボン・バレー構想」に対し、それぞれ、『プログラム』『プロジェクト』の形で肉付けの要。
  2. プレーヤーの選定と必要な政策手段
    財源政策(極力民間資金<金融機関貸付け、ファンド>が付く政策が重要)
    規制緩和・ルール政策(プレーヤー認可権限者の複線化)
    適切なプレーヤー認定政策(真のシステムイノベーション力等保有者の選定)
    各種情報インフラの整備政策(バイオマス賦存量DB<マッピング>、薬効植物DB等)

実現可能な成長政策提言の具体例

1. コーリャン・バレー構想

  1. 未利用植物資源の耕作放棄地栽培による3.5~4兆円新産業創出戦略
    ○対象植物資源:コーリャン&ヒマワリの茎(「コーリャン・バレー構想」)
    ―サトウキビと並び、これら植物の茎には、植物が自身を守るための脂質(Wax)や抗酸化能が強いポリフェノールの含有量が極めて豊富なことが判明。コーリャン・ヒマワリ(の茎)は未利用植物で国内に既得権者がなく、ユーザーニーズや「環境」「健康」「地域再生」という成長戦略にも合致し、高採算の新産業化が可能。
    ―上記脂質(Wax)としては、(1)Policosanols(オタコサノ―ル<運動持続能力を高めるC28>やトリアコンタノ―ル<成長促進能や血糖値低下効果を有するC30>)、(2)Phytosterol(植物性ステロ―ル<ヒマワリに豊富、成長促進効果>、動物性コレステロールを血中に入りにくくし、抗高脂血漿効果)の食品としての高機能性が近年注目。またこれらWaxは、石油・石炭由来の鉱物性Wax(情報インキなど)に比べて、環境負荷が小さく、相溶性が高いため、工業用原料としても着目。○日本全体の栽培面積:耕作放棄地(39万ha)や休耕田の活用
    ―コーリャンはトウモロコシに比べても水不足耐性などが強く、また九葉期まではシアンが多く、鹿など獣被害が回避できるため、拡大の一途の耕作放棄地(埼玉県並みの39万ha)を有効活用することで、年間3,000万トン規模の無農薬栽培コーリャン茎(1ha当たり80トンの茎収量の採取で約850~1,000万円の商品創出<高級Wax約8kg×10万円/kg=80万円、工業用Wax約24kg×1,000円/kg=2.4万円、内実部ポリフェノール入り食物繊維約5トン×1,000円/kg=500万円、外皮、レーヨン、紙パ用繊維約40トン×40~50円/kg=160~200万円、糖度67のポリフェノール&ポリコサノール入り細胞水シロップ約10トン×100~200円/kg=100~200万円>)が可能。
    3.5~4兆円規模の新産業(農産部門への分配は1/4としても約1兆円(現在の農業生産額の約1割強に相当)が誕生。

    ○高付加価値化には日本製造業の優れた技術・プラント力が大きく寄与
  2. 地域「コーリャン・バレー」の栽培面積は最低1,000ha規模か?
    ―コーリャン茎年産約8万トン(農産部門約20~25億円)の産業集積
    ―加工機能も備え「コーリャン・バレー」全体の商品生産額は拡大(85~100億円)!⇒年間8万トン処理には10億円規模の投資が必要?

2. 農水産業の全有価物化による所得3倍増論

  1. 「真空低温セパレーター」による農水産物の全有価物化
    「真空低温セパレーター」とは、兵庫県の中小企業が開発した世界オンリーワン技術で、農水産物の未利用・廃棄部分(カロリーベースで、7~8割)の有価物化、しかも高品質商品化が可能。
    ―従来、酸化・腐敗リスクの高い農水産物は2~3割(カロリーベース)しか利用できず、生産性が低かったが、カロリーベースで、工業並みの投入原材料歩留まり率(8~9割)、かつ高品質有価物化が可能となると、農水産業の生産性3倍化、すなわち所得3倍増が実現する。
    ―この場合、新しいマーケットづくりが必要、かつ地域のトータルシステム化での採算確保政策(シュンペーターが唱えた5つのイノベーションのうち、「マーケットイノベーション」「システムズイノベーション」)が重要。この点、地方自治体や地域金融機関の新産業づくりの横串し役としての機能が不可欠。○魚残渣の高品質魚粉化
    ―水産養殖場の切り身残渣、沿海・近海水産水揚げの小魚残渣、あるいはスーパー等での切り身残渣を、魚粉と漁脂にセパレート。
    ―現在、水産養殖用魚粉は年間40~50万トン(数百億円)を輸入。一方、日本周辺海域からの漁獲高約600万トンのうち2~3割が小魚、魚残渣として廃棄物処理されているのを、日本の誇る技術力で有価物化が可能。

    学校給食残渣、スーパー等の野菜残渣等の高品質飼料化
    ―従来の焼却処理(エネルギーを使い)、あるいは低価格の肥料化、燃料化に代えて、高価格で売れる高品質飼料化等が可能となっている。
    ―学校給食残渣飼料で育てた高品質の豚肉を子供たちに食べてもらうといった”「環境食育」の見える化”といった新しい教育効果も狙える。

  2. 「コーリャン・バレー」の加工機能と組合せた統合クラスター化

3. ナノカーボン・バレー構想

  1. 「ナノ・ダイヤモンド」産業立国
    ○表面の”感応基”がもたらす生体適合性の高さゆえ、ナノテクとバイオテクの融合が容易
  2. 温暖・湿潤な東アジアのバイオマスは、カーボン素材の宝庫