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藻類バイオマスへの新展開

CCPAPA / Pixabay

平成27年度活動報告 第3回「藻類バイオマスへの新展開」

環境・資源科学研究所 有村隆志

1.バイオマス政策

2002年12月に閣議決定された「バイオマス・ニッポン総合戦略」は、バイオマスを総合的かつ最大限に活用して持続可能な社会「バイオマス・ニッポン」を目指すこととして、関係7府省(内閣府、総務省、環境省、文部科学省、国土交通省、農林水産省、経済産業省)により取り纏められた。その後、バイオ燃料技術革新計画(2008年)やバイオマス活用推進基本計画(2009年、2012年)等の関連政策により、廃棄物バイオマスや未利用バイオマスの活用目標値が高度化され続けた。その結果、2011年8月に制定された電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法において、バイオマスは、太陽光や風力等の再生可能エネルギーの一つとして、固定価格買取制度(Feed-in Tariff、FIT)の要素として含まれることになった。

2.地上のバイオマスの活用1)

光合成により二酸化炭素をとりこんで成長するバイオマスは、大気中の二酸化炭素を増加させない「カーボンニュートラル」特性により、地球温暖化対策に有効な資源として注目されている。当初、バイオマス原料とした糖質・でんぷん質を多く含むサトウキビやトウモロコシなどは、食用植物(主食あるいは家畜の飼料)との競合が指摘されている。そこで、食料供給と両立可能な非可食バイオマスの利用が各国で取組まれている。食料と競合しないバイオマスとしては、稲わら、バガス、廃材等のセルロース系が主として用いられており、バイオ燃料プロセスの低コスト化が行われている。燃料(ガソリン)代替とされているバイオエタノールは、サトウキビを広大な土地で安価で生産しているブラジルでは、バイオエタノールとして上市されている。しかし、製造コストを考慮しても、エタノールはガソリンとの燃焼比が60%程度なので、ブラジルから膨大な輸送燃料を使って我が国に輸入することは現状レベルでは非現実的である。燃料に限らず、化成品原料への変換を行うバイオリファイナリー(総合利用)も検討されている。

3.藻類バイオマスへの期待

原油価格の高騰、及び原子力発電所事故に起因する脱原発の影響から、再生可能エネルギーとして微細藻類バイオマスが注目されている。理由は、食料と競合せず、藻類によるバイオマス生産性が、地上の植物に比べて数百倍高いからである。藻類が生産するテルペン類は、多様性に富み、高価な燃料であるジェット燃料代替材料として期待されている。

米国では、エネルギー省(Department of Energy、DOE)が主導して1970年代から藻類をバイオ燃料(ホワイトバイオ)として活用する実用化研究が行われ続けている。現在では、Sapphire Energys社(カルフォルニア州)は、藻類バイオマスを原料として硫黄・硫化水素の含有量が少ないスイート原油と同品質製品を作ることに成功し、精製することで91オクタン価ガソリンや灯油に変換できる技術を有しており、大型プラント化を試みている。また、Solazyme社(カルフォルニア州)は、藻類からASTM規格**(D1655)をパスしたジェット燃料を創製することに成功し、米国Chevron社と提携開発も進めている。地上植物から合成されるバイオ燃料は、飛行高度では凍結する短所があるが、開発されたジェット燃料は高高度でも凍結せず、引火点・安定性は化石燃料由来のジェット燃料と同等レベルと報告されている。藻類バイオマスから高付加価値なジェット燃料の開発は、PetroSun社(アリゾナ州)やInventure Renewables社(アラバマ州)でも活発に行われている。

我が国でも、2010年にJX日鉱日石エネルギー(現 JXエネルギー)、日立プラントテクノロジー、ユーグレナの3社が共同して、微細藻ユーグレナからバイオジェット燃料の開発に着手している。2011年には、IHI社が藻類バイオ燃料会社を設立し、バイオジェット燃料の低コスト化を試みている。

筑波大学では、2007年から藻類を原料としたバイオ燃料の技術開発が開始され、2010年には社団法人藻類産業創成コンソーシアム、2015年夏には藻類バイオマス・エネルギーシステム開発研究センターが設立されている。藻類バイオマスを原料とし、種々な有用製品が開発されている。最近では、国立研究開発法人産業技術総合研究所も参加し、ハイエンドな機能性化学品の製造を試みる予定である。
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藻類バイオマスから有用な機能性化学品のカテゴリー

参考文献

1)  大賀圭治, 日本農業研究所研究報告「農業研究」, 第21号(2008年),165-179.

語句説明

バガス: サトウキビから糖を搾取した後の残渣

**ASTM規格: 米国試験材料協会(旧American Society for Testing and Materials: ASTM、現ASTM International)が策定した規格であり、世界75か国で法規制等の基準とされている。一部の規格は、米国政府の法令に明記され強制適用となっている。