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3E + S +

平成27年度活動報告 第1回「3E + S +」

環境・資源科学研究所  所長 神本正行

1.3E+S

エネルギー問題の基本的考えはエネルギー安定供給 (Energy Security)、環境保全 (Environmental Conservation)、経済成長 (Economic Growth) の3つを同時に達成することで、それぞれの頭文字をとって3Eと呼ばれていました。東日本大震災後新たに安全 (Safety) が加わり、現在は3E+Sとなっています。

7月に発表された長期需給見通しに基づくエネルギーミックス(図1)1)も、3E+Sのバランスの下で決定されたものです。その際、経済成長率を1.7%とし、徹底した省エネルギーの下で、2030年度におけるエネルギー需要を2013年度比で17%程度減らすことが前提となっています。基準年を2013年としたときの2030年のCO2削減目標26%は、このエネルギーミックスと整合した値となっています。

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図1 2030年におけるエネルギーミックス1)

2.再生可能エネルギーのシェアをもっと増やそう

このCO2削減目標26% は各国と比べ遜色ない値ですが、1990年比にすると18% となり、欧州の40% 減に比べ小さな値です。これに関連し8月11日のNature Onlineに記事が掲載されました。日本は川内原発を再稼働したにもかかわらず削減目標が低いという論調です。再生可能エネルギー、特に風力の割合が低いといったことも強調されています。

Japan’s nuclear revival won’t lower carbon emissions enough
http://www.nature.com/news/japan-s-nuclear-revival-won-t-lower-carbon-emissions-enough-1.18156

私はこの削減目標は相当挑戦的な目標と考えています。今後の原発の再稼働が不透明なことに加え、省エネが進み震災後の電力確保のために効率の悪い老朽化した火力発電所を運転せざるを得ないわが国が、欧州と同様にCO2を大幅に削減することは相当困難なのです。

しかし、地球温暖化のリスクを考えれば、何とか目標達成の努力をすることはもちろん、地球温暖化対策に関する国際的な発言権を増すためにも、可能な限り再生可能エネルギーのシェアを増やしたいものです。そのためには、現在のエネルギーミックスではあまり考慮されていない再生可能エネルギーの直接熱利用(太陽熱、地熱・地中熱、バイオマス)を含む様々な再生可能エネルギーを総動員し、需要に合わせて賢くそしてバランスよく使う必要があります。

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図2 多様な再生可能エネルギーとその関連技術

 

3.実現の期待される温泉発電

弘前大学北日本新エネルギー研究所の村岡所長は、以前から「温泉発電」を提唱しています2)。90℃程度の温泉水を成分を変えることなく冷やすことは、中温の熱エネルギーを捨てることに他なりません。これを発電に使うことにより、温泉の熱エネルギーを無駄なく使うことができますし、温泉業者の同意を得やすいことも大きな利点です。温泉の排湯を農業や融雪等に使うことも可能です。問題は温度差が小さいため効率と経済性が低いことです。

zu20150910_03.jpg図3 温泉発電の概念図2)

この温泉発電が現実味を帯びてきました。固定価格買取制度の導入により温泉発電で発電した電力は40円/kWh(税抜き)で15年間買い取って貰えるようになったのです。アドバンス理工(株)のECOR-3-Ftを発電設備として利用した実証実験によれば、熱水温度73.66℃、冷却水温度(水道水)4.29℃の条件で定格最大出力に近い発電が実現されました3)。寒冷地では冷却水(低温熱源)温度が低いため、温泉水(高温熱源)温度が70℃程度と多少低くとも効率の高い発電が可能となるようです。青森市では88泉源中8泉源が70℃ですので、1割弱が温泉発電の候補となります3)

 

4.3E+S+

この温泉発電は紹介した通り浴用利用に対する余剰の温度(熱)を発電に利用しようという発想です。これを逆に(発電を主に)考えるとどのようになるでしょうか。90℃や70℃の温泉水で発電すると高価になるので、経済性を高めるために冷えて適温になった温泉水(発電装置から見れば排水)を浴用にも使おうという発想になる筈です。さらに温泉の排湯を農業や融雪等に使うとさらに経済性が向上するかもしれません。エネルギーシステムにいかに付加価値をつけるかということが、いま求められていると思います。

全国4カ所(横浜、豊田、けいはんな、北九州)で行われた大規模なスマートコミュニティの実証事業では、デマンドレスポンスが電力のピークカットに一定の効果を発揮することが明らかになりました4)。スマートコミュニティは、エネルギーマネジメントにより省エネを行ったり、変動する再生可能エネルギーの導入量を増やしたりする効果もあります。このようなスマートなエネルギーシステムを普及させるには、付加価値をつけてコミュニティの価値を高めるとともに経済性をさらに向上させることが必要です。

例えば、電力需給がひっ迫したときにショッピングモールに来店を促す実証実験が行われています5)。家庭の消費電力(空調等)が下がり、店舗の消費電力はほとんど変わらないので全体として電力消費は下がります。カードのポイント等で来店のインセンティブを与えることにより、店舗にもお客さんにもエネルギー以外のメリットが出てくるのです。スマートコミュニティにはエネルギーマネジメントのために情報通信網が必須なので、これを使ってもっといろいろなことができると思います。例えば高齢化社会に向けて、見守り住宅以上の高齢者サービスが実現できるでしょう。

6月に東京ビッグサイトで開催されたスマートコミュニティJapan2015では木造建築に関わる様々な展示がありました。日経新聞によれば中高層建築に使える新建材、直交集成板を使った大型公共施設やホテルの建設が2015年度中に10棟程度計画されているそうです6)。木造建築はエネルギーの観点からは断熱がよいという特徴がありますが、それだけではなくぬくもりのある空間を創造でき、林業再生にもつながります。これも付加価値の一例です。

これからのエネルギーの基本は3E+Sを超えて3E+S+とし、2030年以降を見据え、すばらしいコミュニティの構築を目指したいものです。

 

参考文献

  1. 長期エネルギー需給見通し小委員会(第8回会合)配布資料(2015.4.28).
  2. 村岡,”日本の地熱エネルギー開発の凋落と将来復活の可能性”,日本エネルギー学会誌,86,153-160(2007).
  3. 村岡,井岡,伊高,”温泉熱発電実証調査 成果報告”,平成26年度新エネルギー実用化検証研究成果報告書(国立大学法人弘前大学北日本新エネルギー研究所:青森市委託研究),3-28(2015)
    https://www.city.aomori.aomori.jp/kankyo-seisaku/documents/nirisereport.pdf
  4. JAPAN SMART CITY PORTAL? http://jscp.nepc.or.jp/
  5. http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1408/21/news037.html

  6. 日本経済新聞2015年8月31日夕刊