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地中熱と太陽熱に関わる2つの話題

平成26年度活動報告 第1回「地中熱と太陽熱に関わる2つの話題」

環境・資源科学研究所 神本正行

1.地中熱で快適に過ごす乳牛

今年も暑い日が続いています。そこで地中熱を用いたちょっと涼しい話から始めることにします。

深さ10m程度の場所の地温は一年中ほぼ一定で、東京や大阪では17℃程度、北海道では10℃程度となります1)。図1は北海道厚岸郡浜中町の齊藤牧場に設置された地中熱交換システムの概要です2)。乳牛は夏季の暑さに弱いのですが、地中から得た冷風を送ることにより、乳量や受胎率の低下を防ぐことができます。もちろん乳牛も快適に過ごせるというわけです。このシステムの大きな特徴は地中の冷熱をそのまま使うことです。通常の地中熱の利用(住居等の冷暖房)にはヒートポンプを使いますが、ヒートポンプを使わないことによりコストを低く抑えることができるのです。

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図1 牛育成舎への地中熱交換システム(リブクールシステム)の導入

実はこのシステムは冬にも使います(というよりそちらが主です)。ヒートポンプで昇温しなくとも乳牛が暖を取るには十分な温度のようです。このシステムの利用により、生後1年以内の乳牛の死亡事故が減少し、肺炎対策用の抗生物質の使用量が例年の半分以下に減少したとのことです3)

欧米に比べ遅れていた我が国における地中熱ヒートポンプの普及が最近急増しています1)。その背景には、自治体やNPOの努力によりこのシステムのメリットを一般の方々に知って貰えたことがあったようです。掘削およびヒートポンプの価格低減が進み、今後さらに普及が進むことを期待したいと思います。その一方で、ここで紹介したヒートポンプを使わないような利用がもっと普及してもよいのではないかという気がします。融雪やいちご栽培などに適用されています4)が、ほかにも適用分野があるのではないでしょうか。

2.太陽熱発電用の新しい熱輸送・貯蔵媒体

昨年”Renewable Energy Focus”という雑誌に「太陽熱発電に新時代到来?」という記事が掲載されました5)。太陽熱発電は太陽電池を使った太陽光発電とは違い、鏡やレンズで集光し高温を得、熱媒体を用いて集熱し、その熱で発生させた蒸気でタービンを回し発電するものです。実はサンシャイン計画(昭和49年~:初の新エネルギー技術開発の国家プロジェクト)の柱の一つは太陽熱発電で、香川県仁尾町では1000kWのパイロットプラントが2基建設・運転されました。その後カリフォルニアでは商用プラントが稼働するようになりましたが、日本の日射では経済性が出にくいことから、わが国での開発や実用化は太陽光発電にシフトすることになりました。

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図2 太陽熱発電パイロットプラント1,000kW x 2(香川県仁尾町、昭和57年)

最近になってこの太陽熱発電が再び脚光を浴びています。地中海沿岸や砂漠のように日射のよいところでは、高い稼働率と集熱温度(例えば500℃程度)が期待できるからです。但し、水を熱輸送媒体として使う限り水蒸気圧が高くなり構造材料の負担(コスト)が増してしまいます。このため高温にしようとすれば蒸気圧の低い溶融塩を用いることが合理的ということになります。

この記事で取り上げられていたのは、集熱および蓄熱用として新たに開発された硝酸塩系溶融塩NaNO3-KNO3-Ca(NO3)2です。この溶融塩の最大の利点は融点が130℃と低いことです。ちょっとしたアイディアに基づく材料の改良のようではありますが、これまで高温で使用されてきた融点222℃のNaNO3-KNO3に比べ凝固のリスクが軽減されるとともに、熱交換の温度差を広くとることができるようになります。現在、地中海沿岸に太陽熱発電所をたくさん建設し、得られた電力を直流送電で欧州等の世界各地に輸送しようという検討が進められています(DESERTEC)6)。極めて壮大な計画ですが、そのキーテクノロジーの一つは意外と身近なもの(金属熱処理などに使われている溶融塩)なのです。

同様の計画として、砂漠で太陽電池材料を作るとともに太陽光発電で発電した電力を超電導送電で世界に輸送する(SSB)7)ことも検討中であることを付け加えておきます。

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図3 DESERTECの概要
http://www.desertec.org/global-mission/
図4 SSBの概要
http://www.ssb-foundation.com/

おわりに

Ecolink21では、昨年7月のシンポジウムのテーマに太陽熱および地中熱利用を取り上げました。再生可能な電力を供給する太陽光発電や風力発電の普及が進んでいますが、再生可能エネルギーを電気に変えることなく直接熱で供給する技術にも注目しよう、というのがシンポジウム開催の趣旨でした。本稿では地中熱利用と太陽熱利用(こちらは熱を電気に変換する太陽熱発電)のほんの一端を紹介したに過ぎませんが、これらの技術を身近に感じて頂き、導入あるいは開発・ビジネス化への参画を一考して頂ければ幸いです。

引用文献

1) 地中熱利用促進協会ホームページ http://www.geohpaj.org/

2) 平成23年度再生可能エネルギー熱利用加速化支援対策事業 事例集(新エネルギー導入促進協議会, 平成25年5月)http://www.nepc.or.jp/renewable/index.html

3) 熱利用DE”ヒートアップ”!! ~熱利用事例のご紹介(経済産業省北海道経済産業局, 平成25年2月)www.hkd.meti.go.jp/hokne/20130220/pamphlet.pdf

4) 例えば弘星テクノ(株)ホームページ http://hirosei.co.jp/heatlesspump.html

5) “A new era for CSP” ?”, Renewable Energy Focus, p.38, January/February 2013

6) DESERTEC FOUNDATIONホームページ http://www.desertec.org/

7) Sahara Solar Breeder Foundation ホームページ http://www.ssb-foundation.com/