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バイオマス半炭化への期待と課題

平成25年度活動報告 第1回 「バイオマス半炭化への期待と課題」

環境・資源科学研究所
佐村 秀夫

福島の第1原子力発電所の事故以来、脱原発とそれに変わるエネルギーについて、今後どのようにしていくか、いまや日本の大きな課題となっている。代替の新エネルギーとして、バイオマスはその一翼を担うものであるが、バイオマスエネルギーに付加価値を与える半炭化技術について概観する。

バイオマスの賦存量

地球上には膨大な量のバイオマスがストックとして存在し、光合成によって常に新たなバイマスがフローとして生産されている。光合成により生産されたバイオマスは、人間をはじめ多くの生物にとっての食料として、あるいは人間が営む社会活動において、様々な形で利用されている。エネルギー源としてのバイオマスの資源量を評価する場合、その対象は大きく二つに分けられる。一つは現時点においてすでに生産されながらも十分に利用されていない廃棄物系バイオマス、もう一つが現時点では十分な生産を行っていない未利用地をエネルギーのために使用し生産するエネルギープランテーションである。

世界の陸上の総バイオマス量は乾重量で約 1.8 兆 t、海洋中に約 40 億 t、土壌中にも陸上バイオマスに匹敵する量のバイオマスが賦存している。陸上の総バイオマス量をエネルギー換算すると 3 万 3,000EJ (1 EJ=1 x 1018 J)となり、世界の年間エネルギー消費量の 80 倍以上に相当する。また、地球上では光合成によって常に新たなバイオマスがフローとして生産されている。その年間の純一次生産量は、陸上で約 1,150 億 t、海洋で約 550 億 t であり、エネルギー換算すると世界の年間エネルギー消費量の 10 倍近くになる。

廃棄物系バイオマスの現存量は推算によると、年間で、農産バイオマスが約 51EJ、畜産バイオマスが約 47EJ、林産バイオマスが約 40EJ となり、合計すると約 138EJ 程度となる。内訳として、最も大きいのは約 23EJ となる家畜ふん尿であり、次に約 22EJ となる丸太残材が続く。
これらのバイオマス資源量を地域別に整理した結果、アジアが約 61EJ と最も高く、ついで北中米が約 24EJ となる。

エネルギープランテーション構想とは、「従来の食糧や建材、素材を生産することを主目的に置くのではなく、エネルギー用途を主目的として成長の速い木質系あるいは草本系のバイオマスを栽培し、5~10 年の短いサイクルで伐採して、これによりエネルギーを製造する」ものである。これらのエコシステムが計画通りに稼働すると、そこに新たに存在するバイオマス量(乾重量)は全地球で 1 兆 8,410 億 t と推計され、大陸が 1 兆8,370 億 t と 99.8%を占め、そのうち森林が 1 兆 7,000 億 t と 92.3%を占めている。バイオマスエネルギープランテーション構想は、石油ショック以後に提案された新しい考えで、現在、スウェーデン、カナダ、米国、オーストラリアなどで大型化、実用化のための実証実験が進められている。バイオマス種としては、ユーカリなどが候補としてあげられ、その他、各種の油糧作物が有望視されている。

エネルギープランテーションの資源量に関しては、ブラジルのユーカリ林プランテーションの経験に基づく推算があり、アフリカ、ラテンアメリカ、アジアを対象としたエネルギープランテーションの資源量(ポテンシャル)は約 70EJ/年と報告されている。

半炭化の概要

これらの資源に対して如何に経済性を持たせるかの革新的技術が半炭化技術である。
半炭化はバイオマス固形燃料を作るための熱操作技術であり、その製品は他のバイオ燃料に比べて優れた特性(取り扱いやすさ、解砕性、及び混焼性など)を持っている。実験やパイロットプラントで作られたバイオマス半炭化物は実用上好ましいデータを示しているが、半炭化製品を市場に出すために、なお改良すべき種々の技術的、商業的課題がある。半炭化技術については、現在、商業ベースに乗せようという試みがなされおり、年間当たりの処理量が3,5000~60,000tベースの半炭化プラントが2010~2011年にかけて欧州でスタートした。北米でもいくつかの興味深い開発がなされているが、いまだ開発途上にある。バイオマス半炭化の潜在的市場は極めて大きく、大形の発電所、工業用熱源、住宅を含む地域の熱源に利用される可能性を秘めている。多くの国の公共事業体は、エネルギーの形態が大きく変わるであろうとする問題に直面している。それらが抱える新エネルギーやCO2削減の課題の中で、市場は、よりクリーンで再生可能なエネルギーやその生産システムを求めつつあるが、このような中で、公共事業体はコストを大きく削減出来るような技術に関心を寄せている。風力発電や水力発電と併用してバイオマス発電を取り入れることは、世界的に再生可能エネルギーを発展させていこうという目的に大きく貢献することになる。またそのこと自体、資源の枯渇を防ぐことにつながるし、バイオマス半炭化物を混焼するということで、現在使われている石炭発電所を取り替えることなく、よりクリーンな稼働を可能にする。しかしながら、混焼発電に関して言えば、現行石炭発電プラントは大量のバイオマスを受け入れられる構造とはなっていない。実質的には、混合比率(カロリー比)として5~10%以上のバイオマスを混焼することが出来ない形になっている。この量を増やすためには、事業体として専用のバイオマス処理設備を設置するために、少なからず投資をしなければならない。しかし、これらの設備が設置されても、いま先端のバイオ燃料である木質ペレットなどが使用される場合において、石炭に比べ化学的、物理的性質が異なるため、混焼割合はしばしば20%程度にとどまる。バイオマス半炭化物は、この混焼割合をより大きく、場合によっては40%程度にまで増やす可能性を持っており、一方では、新型のバイオ燃料に比べ投資費用と輸送コストを削減することが出来る。

バイオマス半炭化製品の需要は現在のところ、主に公共事業体からであるが、それらの団体はCO2排出削減や再生可能エネルギー燃料使用を増加させる中で、コスト削減効果や燃料供給確保の課題に取り組んでいる。来年には公共事業体が使用する量だけで、現在のバイオマス半炭化物製造能力を大きく超えることになる。このことは、半炭化製品開発業者にとっては大きなプレッシャーとなっており、今後出来るだけ早く技術的なスケールアップが望まれているが、今のところ半炭化の技術、処理プロセスの最適化に向けて努力がなされている段階である。多くの半炭化技術は現在、木質バイオマスを対象にして設計及び試験がなされている。現在行なわれているパイロットプラントの試験の中で見られることであるが、木質バイオマス以外の他のバイオマスの処理については、原料供給の面である程度の制約があり、今後農業系バイオマスの処理を課題に据えて、技術的にも経済的にも成り立つ方法を研究開発していかなければいけない。現在、市場性をめざすプラントから経験上得られている技術として、半炭化物の粒径、処理温度、装置内での滞留時間のバランスを取ることが重要であることが分かっているが、対象バイオマスの種類によってはそれぞれが変化し得るファクターとなっている。その他、エネルギーの収率、製品の品質、原料価格など考慮に入れることにより、最適な経済性を得ることが重要な目的になる。技術開発以外でも、半炭化製品の標準化や大量生産を行うことで、市場を発展させることが求められている。しかしながら現在のところ、半炭化製品の貯蔵、輸送、解砕、燃焼などについては多くの課題を残しているし、言ってみれば半炭化の市場は、最初に稼働するプラントが、期待に沿った製品を作り上げることが出来るかどうかに掛かっている。

半炭化技術と半炭化製品量は、いまだ商業的には不十分な状態にある(市場ベースとしては、年間100,000t以上必要)。以下本文では、半炭化製品をコマーシャルベースに乗せるための技術的、商業的方策について述べる。