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化石燃料としてのオイルサンドとレアアース、そしてエネルギー対策

平成24年度活動報告 第3回 「化石燃料としてのオイルサンドとレアアース、そしてエネルギー対策」

環境・資源科学研究所  有村隆志

1.はじめに・・・再生可能エネルギーの貢献度の現状

エネルギー・資源を自活できない日本にとって、これらの確保はこれからの持続可能な日本社会を謳う上で最も重要である。そもそも、エネルギーは、地球文明の発展の原動力となっていることは周知であり、火、蒸気機関、化石燃料、そして原子力は、快適で便利な社会生活構築に飛躍的に貢献している。しかし、エネルギー利用と科学技術が様々な形で環境に負の影響を与え、トレードオフの関係になっていることも事実である。化石燃料や原子力エネルギーに対して地熱、風力、太陽などの再生可能エネルギーが注目されているが、日本の一年間の電気発電量(9800億KWh)の90.1%(平成22年度)を占める化石燃料・原子力エネルギーを代替するには、まだ技術的に実用化には及ばない状況である。因みに、平成22年度は、水力発電が8.7%であり、水力発電以外の再生可能エネルギーはわずか1.2%の貢献である。

2.化石燃料として活用されるオイルサンドとオイルシェール

石油・石炭・天然ガス以外の化石燃料として、オイルサンドやオイルシェールが知られている。オイルサンドは、およそ10%の重質の原油を含む砂岩であり、カナダ・アルバータ州とベネズエラ・オリノコ川で産出され、その埋蔵量は石油埋蔵量に匹敵する。オイルシェールは、原油と同質のオイルを含む油頁岩(ゆけつがん)の一種で、米国のグリーン・バレー頁岩領域(コロラド州、ワイオミング州、ユタ州)のみで1兆8000億バレルの埋蔵量がある。地球上でのオイルシェールの資源埋蔵量は石油の数倍とも言われているが、その精製プロセスは非常にコスト高なので他の化石燃料と比して競争力が乏しい。他方、オイルサンドは、クルードなビッチュメンを経て数プロセスで普通の石油と同等のものが得られることから、カナダでは石油輸出が行われ外貨獲得に貢献している。現在の1バレルあたりの石油精製費用は、ビッチュメンで50-100ドル、通常の原油では10-20ドルであり、精製技術の経済性は重要視され更なる研究がなされている。

平成24年7月3日から10月2日までカナダ・アルバータ州エドモントン市のNational Institute for Nanotechnologyでの在外研究

上図:講演終了後、アルバータ大学のRoom At The Topにて、ジーノ氏アンドルー氏とランチ

3.アルバータ州立大学オイルサンドセンターでの研究

アルバータ州立大学オイルサンドセンターでは、オイルサンドに特化した研究がなされており、今年(2012年)から5年間・総額30百万ドルのオイルサンド精製プロジェクトが開始されている。予算は、カナダ政府、アルバータ州政府、企業の複数から拠出されて、センター規模は実験助手も含めると総勢おおよそ60人くらいである。現在のところ、地中の比較的浅い層に存在するオイルサンドをビッチュメンとして取り出すには、高温・高圧水を用いる方法が定法とされている。しかし、精製に用いた廃液水は、「clay, MFT: Mature Fine Tailing」を含み有毒であり環境問題となっている。従がって、廃水処理と精製プロセスにおける残渣鉱油を地下に埋め戻す環境対策技術が当面の研究課題となっている。オイルサンドセンターでは、水に代わる溶媒を開発しオイルサンドからビッチュメンを取り出す革新的方法、およびアスファルト留分からの金属除去技術を主軸に研究が行われている。

4.オイルサンドに含まれるレアアース

さて、次世代IT技術には必須のレアアースも日本では自活できない資源の一つである。2年前に(平成22年11月18日)、環境・資源科学研究所からの発信として「希少資源としてのレアアースと日本の課題」と題し、レアアース資源は、中国に限らず世界中に広く分布していることも事実なので、「中央アジア、東南アジア、南アフリカと共同探鉱開発を行うことで、隣人である中国のみならず幅広い視点を持ったグローバルな政策展開」の必要性について論じている。今回、オイルサンドなどの化石資源精製に関して調査する上で、化石燃料にも多くのレアアースが偏在していることを知ることになった。例えば、アルバータ州アサバスカにあるオイルサンドから得られるビッチュメンには、500から1000ppmのバナジウム、ニッケルが含まれている。バナジウムおよびニッケル等の重金属は、ビッチュメンの重留分であるアスファルトに含まれているので、粘性の要因であるアスファルト成分を除くと容易に除去される。およそ50%がポルフィリン誘導体(数個のベンゼン環がポルフィリン環に縮環した誘導体)として含まれており、その他はどのような形で含まれているのか明確でない。ビッチュメンからアスファルトを除く方法は、現在2通りで行われている。

  1. オイルサンドの水抽出除去方法によって得られたビッチュメンをパラフィン溶媒で処理しアスファルトを除くと、この時点でほとんどバナジウム及びニッケルを除くことができる。欠点は、除いたアスファルトに10から20%のビッチュメンが含まれることである。
  2. ビッチュメンをハイドロクラッキングおよびコーキングプロセスでアップグレード(精製:アスファルト成分の除去)する場合、アスファルト成分(ベンゼン環が10~20以上も縮環した構造)をより小さな分子(コーカー)とする。このコーカーにほとんどの重金属がふくまれており、このコーカーの除去は現在のプロセスで容易に除去されている。

実用化されている1及び2の方法は、ともに経済性・環境適応性が重視されている。重留分であるアスファルトからの金属除去研究は更なるコスト効率向上を目指して現在進行形である(引用論文)。また、オイルサンドセンターが所在する同じ建物にカナダ国立ナノテクノロジー研究所(National Institute for Nanotechnology: NINT)では、オイルサンドに含まれるポルフィリン構造の計算シミュレーションなどの理論的研究が行われている。In-situで安価・容易に重金属を除去できる方法が期待されているが、精製後の残油の埋め戻しのための環境適応対策もセットとして考慮することが肝要とされている。

5.おわりに・・・エネルギーは技術・経済・政治が絡む国家戦略問題

現在、我が国は、政治的に不安定な中近東に、石油の約90%、天然ガスの20%を頼っている。想定外のシミュレーションとして、もしこれがゼロになった場合は、1次エネルギー供給量は約60%に低下する(原発をフル活動した場合でも)ので、照明・家電製品などによる計画節電では間に合わないことは想定できる。今後のエネルギー源を再生可能エネルギー、特に有望である太陽エネルギーにシフトすることを目途とすれば、①直流を交流に変換する際の高調波対策、②分散電源としてのシステム化が課題と考えられるが、その技術的ハードルは依然として高い。エネルギーそして資源に係る問題は、多面的で奥が深い問題であり、それらが自活できない国からの一方的な見方では論じることができない。エネルギー資源問題は、技術・経済・政治(外交)がからみ、まさしく国家戦略的問題である。

引用論文:
Separation of Petroporphyrins from Asphaltenes by Chemical Modification and Selective Affinity Chromatogtaphy, C.-X Yin, J. M. Stryker, M. R. Gray, Energy & Fuels, 2009, 23, 2600-2605.