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転換期を迎えた再生可能エネルギー

平成24年度活動報告 第1回 「転換期を迎えた再生可能エネルギー」

平成24年度第1回(7月3日)
神本 正行

はじめに

6月26日の日経新聞に「再生エネ新設、原発2基分 メガソーラーや風力」、6月30日には「経産省、再生エネ買い取りで44発電設備を認定」という記事が掲載された。後者の記事には「経産省は今年度中に再生可能エネルギー全体で250万キロワットの導入が進むと試算している。」と書かれている。7月1日からの全量買い取り制度導入で、再生可能エネルギーの導入に弾みのついた格好だ。

転換期を迎えた再生可能エネルギー

これまで「パラサイト」などと言われて揶揄されていた再生可能エネルギーが、東日本大震災の後、大いに注目されるようになった。以下の3つの理由から再生可能エネルギーは転換期を迎えたと言ってよいだろう。
(1)「再生可能エネルギー」が一般的な言葉として使われるようになった
(2)全量買い取り制度によって大量導入への弾みがついた
(3)それに伴い、エネルギー供給に責任を持つ運用が求められるようになった
再生可能エネルギーに近い言葉として、わが国では「新エネルギー」[1]という法律で定められた用語が長く用いられてきたが、欧米では以前からRenewable Energy(再生可能エネルギー)が一般的な言葉として用いられている。この言葉がわが国でも一般的に使用されるようになったこと自体が時代の変化を感じさせる。
ドイツなどで成功したと言われる全量買い取り制度をわが国が導入した意義は大きい。これで大量導入への弾みがつくだろう。しかし制度上の課題もしばしば指摘されており、今後その推移を見守りつつ柔軟な対応が必要だ。
わが国で今後大量導入の期待されている再生可能エネルギーである太陽光発電や風力発電は変動する電源である。導入量が少なかった時代はほとんど問題とならなかったが、大量に導入されると電圧や周波数を一定に保つことが難しくなる。電池等による電力貯蔵やスマートグリッドが求められている理由の一つはこのためである。これらの技術の導入は追加のコスト負担にもなるので、一層の技術開発が求められる。

普及を阻む壁

再生可能エネルギーは、その資源量が多いにも拘らず、水力発電と従来型のバイオマスの熱利用を除けば世界の一次エネルギー供給の0.4%、わが国では約1%に過ぎない[2]。普及を阻む以下のような様々な障壁が存在するからだ。
(1)経済性の障壁
(2)制度上の障壁
(3)社会文化的な障壁
(4)情報と意識の障壁
そもそも全量買い取り制度を導入するということ自体、多くの再生可能エネルギーのコストが高いということである。並行して技術開発・市場開拓によるコスト削減が進むことが全量買い取り制度の大前提だと思う。この意味で新技術開発の手を緩めてはならない
最近国立公園での地熱開発に関する規制緩和を初めとする様々な規制緩和が進んできたが、より一層の規制緩和をスピード感を持って行う必要がある。スピーディーな規制緩和は復興の象徴的事項である瓦礫処理についても求められている。
景観やデザインの問題は個人差が大きいが、普及のための重要な要素である。建築物にマッチしたデザインへの配慮が太陽熱利用機器等で多く見られるようになってきた。
地熱発電や潮力発電は、温泉業者や漁業関係者の協力が不可欠だ。そのためには科学・技術に基づく正確な情報の提供が必須である。
このような壁を乗り越えていくのがそれほど容易でないことは過去の多くの事例が示している。再生可能な電力(太陽光、風力、地熱等)だけでなく再生可能な熱(地熱・地中熱、太陽熱、バイオマス等)も含め再生可能エネルギーを総動員し、それぞれの特徴を生かした賢い使い方が必要だ。

新たなイノベーションモデルを

東日本大震災後に再生可能エネルギーが注目を集めた理由は、一次エネルギーとしての量的期待や二酸化炭素をあまり排出しないという質的期待とともに、多くの再生可能エネルギーが分散型システムであり、災害時のリスク分散になるという期待があるからである。万一災害時に電力系統から電気が供給されなくなったときに、別系統の自営線でつながっている施設には電力貯蔵機能を有した太陽光発電システムや風力発電システムから電力を一定時間供給することができる。
分散型システムは集中型システムに比べ規模的にも小さく、また再生可能エネルギーが薄く広く分布することから、地域ごとに特徴を出しやすいともいえる。最近モーターメーカーが風力発電システムに進出したり、自治体の建物の屋根を太陽光発電システムへの投資者用に貸し出したりする事例が出つつある。今後地域の企業やNPOの参加できる機会が増大するだろう。
全量買い取り制度が導入されても初期投資が大きいので簡単にはいかないかもしれないが、新たなイノベーションモデルとそれを支える制度に期待したい。

科学・技術に基づく正確な情報

将来のエネルギー政策を決める場合や、ある再生可能エネルギーの装置を設置するかどうか判断する際に、科学・技術に基づく正確な情報が不可欠である。再生可能エネルギーの資源量は地域によって異なるため、地域ごとの情報が最低必要である。地熱発電開発の温泉への影響[3]、潮力発電の漁業への影響等々も、利害関係者の協力を得るには重要な情報である。
また、情報が正確でも、それを一般の方が正しく解釈できるような説明の仕方も重要だ。IPCCの「再生可能エネルギーと気候変動緩和に関する特別報告書」[4]が報告された際のプレスリリースに「もっとも楽観的なシナリオでは2050年に再生可能エネルギーが一次エネルギー供給の77%を賄うことができる。」と記載されていたものが、あるラジオ放送のニュースでは「IPCCは2050年に再生可能エネルギーが一次エネルギー供給の77%を賄うことができると報告した。」と放送していた。
最初に紹介した日経新聞の記事「再生エネ新設、原発2基分 メガソーラーや風力」の見出しを見て記事の中に200万キロワット超と明記されている「発電能力」ではなく「発電量」が原発2基分と誤解する人はいないであろうか。太陽光発電や風力発電の設備利用率がそれぞれ1/7程度、1/5程度と低いため、「発電量」は原発半基分以下となってしまうのである。どう理解するかで今後の見通しに対する判断が大きく異なってしまうであろう。

おわりに

本稿で最も言いたかったことは、全量買い取り制度で弾みのついた再生可能エネルギーの普及が短期的に終わらないようにするには、技術開発と様々な障壁を乗り越えるための取組を強化すべきということである。また、再生可能エネルギーの利用と「地域」の関わりについても触れた。地域に新たな産業とイノベーションモデルが生まれ雇用が促進されることを目指したい。
東日本大震災からの復興から日本再生を目指すには、短期的対応とともに中長期的視点が不可欠である。次回以降、減災や希少金属等の資源問題、バイオマスなど、環境、資源に関する話題を取り上げていく予定である。

【参考】
[1] 資源エネルギー庁ホームページ.
[2] Energy Balances of Non-OECD Countries, International EnergyAgenc, Paris, France (2010).
[3] 環境省自然環境局、「温泉資源の保護に関するガイドライン」(地熱発電関係)、(平成24年3月)
[4] “Special Report on Renewable Energy Sources and Climate Change Mitigation, Working Group III of the Intergovernmental Panel on Climate Change”, Cambridge University Press, Cambridge, United Kingdom and New York, NY, USA, 1075 pp. (2011).