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ガレキ処理の一提案―がれきを活用した「緑の防波堤」について

ガレキ処理の一提案
―がれきを活用した「緑の防波堤」についてー

NPO法人 環境国際総合機構
会 長 宮田 秀明
理事長 花澤 義和

東日本大震災によるガレキは2400万トンとも言われているが、一年経過した今もその処理は数%に留まっている。その大きな原因は政治主導の欠如も一つであるが、分別、中間処理など処理のプロセスは従前の廃棄物処理法に従わざるを得ないからである。法規制として当然守るべきことは理解できるが、千年に一度といわれる国難、非常事態に遭遇している現状で、何故特別な措置が取れないのか甚だ疑問である。

そこで昨年の発災直後から、植物生態学者の宮脇昭先生が市町村長や政府与党、環境省等へ提言されていた《ガレキを利用した「緑の防波堤」づくり》について、実現可能性は現状の法体系や行政区分からは困難があることを承知で、今一度見直してここで提案をしたい。

まず、ガレキを利用した「緑の防波堤」の特徴をまとめてみる。
  1. 震災によって出た大量のガレキ、その利用可能なものと、有毒なもの(特管物)や分解不能なものとを分別する。それ以外の土に混ざった木質ガレキ、レンガ、コンクリートの破片などは、全てをエコロジカルに最も有効な「地球資源」として活用する。
  2. 穴を掘って発生土とガレキをしっかり混ぜながら、その土地本来の常緑広葉樹(タブノキ・スダジイ・シラカシ・ウラジロガシ・アカガシなどを主木とする)の根群の充満したポット苗などの苗木を植える通気性の良いマウンドを作る。マウンドの幅は10m以上(出来れば50~100m可能なところはそれ以上、マウンドの幅が広いほど、高さが高いほど、防災機能は倍加する)、そこに樹高30cm足らずの常緑広葉樹の苗木を混植、密植する。
  3. その苗木は15~20年で多層群落の森に生長し、最終的には高さ20m、条件が好ければ30m近く伸びて、安定度の高い多層群落の柔構造で堅固な「森の防波堤」になる。今後も必ず襲うあらゆる自然災害、大きな津波に対しての破砕効果も高くなる。
  4. 植樹当初の30cmの苗木は乾燥重量が300g位だが、生長して2tになると、その半分の1tはカーボン(地球温暖化の元凶といわれる炭素)を吸収、林内に固定。いろいろな樹種を混植するので生物多様性の維持にも役立つ。CO2削減、温暖化抑制にも役立つ。
  5. こうして出来た「森の防波堤」は、環境保全林や地域の観光資源となり、更に80年から100年で超高木に生長したタブノキ、シイ、カシ類などを丁寧に択伐して、焼かない、捨てないで家具や建築材として活用すれば、経済効果も十分に見込める。林内には後継樹がひしめいているので、直ちに生育してその空間をうめる。従ってスギ、ヒノキなどの客員樹種と呼ばれる単植林と異なり、防災・環境保全機能は、皆伐・破壊しない限り次の氷河期間で9000年は、地球経済と共生した「いのちの森」として持続する。

以上の提言のポイントを3点あげる。

ポイント1.瓦礫は貴重な地球資源

土と混ぜて通気性の良いマウンド(土塁)を築く。次に土地本来の樹種すなわち潜在自然植生の主木群を選択しポット苗を混植・密植する。こうした瓦礫を積極的に利用した都市林の形成は、第二次世界大戦後のドイツなどで実績が見られる。土地本来の常緑広葉樹の深根性、直根性は根が土中深く入り、瓦礫を抱くことで強固になる。また瓦礫内の空気は根群の発達に最重要で、地中深くへと発達を促す。(エアレーション)有機性廃棄物は土と混ざることで時間をかけて分解され樹林の養分となり森の発達をより確実にする。

ポイント2.多層群落の森は津波エネルギーを破砕効果で減衰させ、水位を低下させ、引き波ではフェンスとして海への人命の流出を防ぐ

コンクリートや鋼製の構造物で津波を防ぐ方法には限度もあり、津波のエネルギーを倍加させるが、森では波を破砕し、逃げる時間を稼ぐ。また引き波の際に林立している樹木に抱きつけば波は瞬時に引くので、1万人近くの人が海に流されないで済んだはずである。つまり完全でなくてもきわめて高い確率で「減災」は可能である。

ポイント3.国民運動として、世界が注目する9000年続くいのちのモニュメント「森の長城」は、CO2削減・生物多様性・教育・憩い・観光資源として新しい産業に。老大木は建材・家具・木製品など経済林として利用可能
○厳しい環境に耐える「本物の森」

マツ林やスギ林などは木材生産を目的とした人工林であり、そのようなある
特定の種だけが単植されているような場所は本来の自然界にはあり得ない。
土地本来の森の姿は次のようになっている。

  • 常緑広葉樹林帯
    高木・・・タブノキ林、シイノキ林、カシ林
  • 亜高木・・ヤブツバキ、モチノキ、シロダモ、ヤマモモ、カクレミノ
  • 低木・・・アオキ、ヤツデ、ヒサカキ
  • 草本・・・ヤブラン、テイカカズラ、ベニシダ(草本性ツル植物、シダ植物)

○過去の災害にみる「緑の壁」の効力
  • ・関東大震災時の岩崎庭園(現在の清澄庭園)に逃げ込んだ約2万人は、タブノキ、シイ、カシ類の常緑広葉樹の防災林すなわち「緑の壁」によって火災から守られた。(広大な空き地であった元陸軍被服廠に逃げ込んだ約4万人は殆んどが火災で亡くなった)
  • ・明治神宮の森は東京大空襲で大火に包まれ、社務所などが焼失したものの、鎮守の森にクスノキ、シイ、カシ類が育っていたおかげで全焼を免れた。
  • ・浜離宮恩賜庭園には250年以上前に植えられた常緑広葉樹のタブノキ、スダジイなどが関東大震災や東京大空襲にも耐えて、今でも逞しく繁茂している。
  • ・山形県酒田市の大火(1976.10)は1700棟以上、町の中心部の大部分22.5haが焼失したが、本間家という旧家に屋敷林としてタブノキが2本植えられており、ここで大火が止まったと。以来、酒田市長は「タブノキ一本、消防車一台」というスローガンを掲げ、タブノキの植林を行ったとの事。
  • ・阪神・淡路大震災(1995.1)でも焼け野原の中で緑の木々が生い茂ったままの公園があり、そこには、アラカシ、クスノキやヤブツバキがしっかりと残存し、火防木の機能を発揮していた。
  • ・今回の大津波の直撃を受けた新日鉄釜石製鉄所では、構内の大部分が冠水し、操業を停止せざるを得ないほどの壊滅的な被害を受けていたが、周囲の港の建設などで処理されないで残されていたシラカシの小樹林は倒れることなく根群が地中深く入り、樹冠が10m以上の高さを保持していた。

○常緑広葉樹が災害に強い理由
  • ・タブノキ、やシイ、カシ類の常緑広葉樹がなぜ防災力があるのか?それは、地中に深く根を張って護岸の役割を果たし、たとえ地上部が伐採されても根元から萌芽、株立ちして再生するためで、かつ、冬でも常緑で水を含んでいるために四季を通じて再生萌芽し、火防木の役割を果たすからだ。
  • ・また常緑広葉樹は防潮林としても非常に有効だ。防潮林は、潮風、潮水、津波などの害を防止する目的で造成・管理された海岸の保安林のひとつだが、昭和初期以降に作られた防潮林は主木としてクロマツ、アカマツが最も適していると考えられていた。その理由は、主に風や飛砂を防ぐためで、落葉樹に対して四季を通じ比較的枝葉が密に付いている針葉樹が適していると判断されたためのようだ。しかし常緑広葉樹に比べて根の浅いクロマツ、アカマツでは今回のような巨大な津波の衝撃には耐えられなかった。浸水深5m以上の津波ともなれば、根こそぎ倒れるか、太い幹も殆んど切り裂かれたように折れて、切り取られた樹木が津波で流されて新たな衝突による二次災害の原因にもなった。
○「森の防波堤」に関する環境省からの質問とその回答

この提言は、環境省廃棄物リサイクル部長、廃棄物対策課長、廃棄物リサイクル推進室長ほかにも話が伝わり真剣に考えていただき、7つの質問があり宮脇先生の回答も届けられている。主なものを紹介する。

  1. ガレキには大きなコンクリート片とか違う大きさのものが含まれているが、これらの大きさはバラバラでも良いのか?
    (回答)
    可能な限り、大きなものは子供の頭ぐらいの大きさに砕いて(大きさは均質でなくて良い)、土や砂礫と混ぜながら盛ってゆく。そのようなマウンドは、根群の発達に最も重要な通気性が良好である。また土中では根はガレキを抱くので、津波、台風にも倒れにくくなる。
  2. ガレキをそのまま埋めて、このようなマウンドを作ると、強度に問題は出ないか。
    (回答)
    新日鉄君津・名古屋・大分などの製鉄所の境界防災・環境保全林形成の実例が実証している。上記のようにガレキをおおまかに砕いて土や砂礫と混ぜつつ、ほっこりとマウンドを形成すると通気性が維持され、木片はゆっくりと分解されて木の養分となり、10~0年間で5~10%沈下して安定し、樹林帯の基礎としての強度は確実に確保される。
  3. 相当の穴を掘って、このようなマウンドをつくり、ガレキを埋めるという作業だけでも、相当の作業量になり、費用的にも決して安くないのではないか?
    (回答)
    前掲の図にあるように、森の長城は地上部に盛る土量が大半であり、地表を掘削する穴は、土量によって規模が異なる。埋め立て、焼却に比べて労力・作業量は格段に小さく、費用的には将来の維持・管理コストに比してはるかに安価である。
  4. ガレキには塩分を含んでいるものもあるが、それらは塩抜きしてからでないと埋められないのか?
    (回答)
    植林地はかまぼこ型にガレキなどを発生土などと混ぜて盛ったマウンド(土塁)であり、降水量の豊かな日本では表層からの雨水の浸透により早期に塩分はマウンドの下の地中に流下する。したがって植樹直後に根を張る表層土部分からガレキなどの「水抜き」は不要である。
  5. ヘドロが堆積しているところもあるが、ヘドロなどを混ぜて埋め立てることはできるのか?
    (回答)
    ヘドロは主に高チッソ性の有機富養土で、砂礫や土、ガレキなどと良く混ぜ込むことにより、樹木などの植物への最も有効で重要な養分(肥料)として利用が可能である。
    木材ガレキについても焼却すれば炭酸ガスが発生し、さらに有機物としての貴重な地球資源を失うことになる。法律上の整備を行い、マウンド内に土砂と混ぜてそのまま埋め込むことにより、ゆっくりと分解し木の養分となり、森林づくりの遅効性の堆肥として活用できる。木片を生きた防災林の形で再生することにより、極めて有効な利用が可能である。また、将来的には経済林としても役立つ。ドイツ、オランダなどでは州条例などで伐採、剪定したりした木質形のいわゆる廃棄物は、焼却処理を禁じているところも少なくない。木片などの植物性有機物ガレキは焼却したり廃棄したりしないで土と混ぜて森・緑地形成などに積極的に利用するように条例などで決められており、都市林(アーバンフォーレスト)などが第二次大戦後、戦災ガレキを土中に埋めて作られている(ロッテルダムの干拓地森づくり、ミュンヘンのオリンピック会場など)。

以上が要旨でありますが、今こそ政府の先見性、決断力、持続力さらに国会議員の先生方の英断と実行力が問われています。

既に昨年来、宮脇先生はこの提言を、被災地の長である仙台市長や南三陸町長をはじめ、内閣府の「東日本大震災復興構想会議」五百旗頭議長や当時の民主党の岡田幹事長にも提案されています。そして当時の管首相も「後世に残る重厚な提言をいただいた。最大限生かしてこれからの復興に当たりたい」と語り、復興の基本方針を定め、2011年度第三次補正予算案に反映させるとしつつも、既に退陣され、今も政府の求心力が落ちていることから、提言の実現性が危ぶまれております。そのほか、林野庁の皆川長官や末松林政部長からも賛同の意が示され、また財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)の浜中理事長、森所長を通して環境省にお願いに行っていただき、伊藤廃棄物リサイクル部長、徳田廃棄物対策課長、森下リサイクル推進室長ほかに聞いていただき、前述の7点ほどの質問がありました。

千年に一度と言われる大災害で、これほどのガレキ処理は過去に例がなく、環境保全、経済性、安全を配慮した最善の方法があれば、既存の法規制を変えてでも実現を図る努力が重要であります。そのためには良識ある政治家の力が是非とも必要であります。ご賢察を宜しくお願いいたします。
NPO法人環境国際総合機構も宮脇博士の「宮脇方式」を支持しております。

参考文献
宮脇昭 瓦礫を活かす「森の防波堤」が命を守る
-植樹による復興・防災の緊急提言-
学研新書090